大地震後の円安進行

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火焔熊
火焔熊

2024年1月1日の令和6年能登半島地震はマグニチュード7.6の大規模災害となってしまいました。約13年前の東日本大震災も大規模災害だったのですが為替の動きは異なる動きとなっています。

東日本大震災の時は円高になった

 東日本大震災後は円高となりました。2011年3月11日のドル円相場は83.42円でしたが2011年3月17日には79.84円となっており、3.58円も円高となっています。

理由としては下記のものがあげられていました。

  • 日本の保険会社が海外資産を売却し、円に替えて保険金支払いに充当するであろうと予想された
  • 日本企業が海外投資を控え、国内問題の処理、国内事業の再建に没頭すると予想された
  • 日本政府が財政赤字であり、新規のアメリカ国債への投資を控える、または保有アメリカ国債を売却し、国の再建に充当すると予想された(この場合、アメリカ国債価格は急落する可能性があった)
  • 日本の金融機関に対する国内資金需要の増加により、海外での運用が縮小すると予想された

 主な要因は①の「保険支払いのための円貨準備による需要増が見込まれたため」と考えられていたようです。2011年10月には75円台と円安がさらに進んでいますが、これは震災前から円高トレンドだった中で起こっているのでどこまで震災の理由なのかは分かりかねるところがあります。

R6能登半島地震では円安に

 対して能登半島地震では2023年12月29日の142.33円から2024年1月9日の144.48円と2.15円の円安に振れています。

東日本大震災とR6能登半島地震で為替の動きが異なったのは何故か

 今回R6能登半島地震で円高にならなかった理由は何故なのでしょうか

令和6年能登半島地震と東日本大震災の規模の違い

 両地震共に大地震と言えるのですが、数字で追ってみると被害状況が大きく異なる事が分かります。

R6能登半島地震(2024.1.1)※1東日本大震災(2011.3.11)※2
マグニチュード7.69.0
死者(人)20219,765
行方不明者(人)12,553
全壊建物(戸)293122,039
半壊建物(戸)60283,698
※1 総務省消防庁:令和6年能登半島地震による被害及び 消防機関等の対応状況(第24報) 
※2 内閣府防災情報:平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について

東日本大震災での円高の理由がR6能登半島地震で殆ど当てはまらない

 ここ10年近くで日本の労働人口、特に土木建築分野での人口減。産業の空洞化などにより東日本大震災の当時とは状況が大きく異なってきています。そのため先に挙げた東日本大震災の円高の理由が殆ど当てはまらなくなってきています。

  • 東日本大震災の円高の理由①
    被害の規模も大きく異なる事と、保険会社も当時の保険支払いのためのドル売りによる円貨準備は無かったという事実があったので今回円高が起こらなかった事は頷けます。
  • 東日本大震災の円高の理由②
    2011年当時と比べ国内産業の空洞化が進み、今回再建すべき国内事業が大きく減ってしまった事から今回の能登半島地震では起こりにくい状況にあると考えられます。
  • 東日本大震災の円高の理由③
    財政赤字は当時から改善していませんので今回の能登半島地震と東日本大震災で大きな違いはないように思えます。
  • 東日本大震災の円高の理由④
    今回の能登半島の再建はマンパワーがボトルネックとなる可能性が高いと考えられます。ただし、現在地震の起こる前から大阪万博では人手不足が叫ばれており、能登半島地震の復興に充てられる人材の余裕があるとは考えられません。したがって復興の計画は大きく遅れる可能性が考えられます。すると復興特需的なものも考えにくいと考えられます。

復興のための海外からの資源の輸入のためにドルが必要となる

 対して復興のためには、建築材料など多くの輸入が必要となり、また現在の資源高によりさらに資金の準備が必要となります。また産業の空洞化により、原材料だけでなく完成した製品についても海外からの輸入が当時と比べて増えています。そして海外での決済は基本的にはドル決済のため、円が売られてドルが買われやすくなる可能性が高くなります。

日本の構造の変化と世界的な資源不足による円安へ

 上記により東日本大震災での円高になる論理が今回の能登半島地震では通用せず、円安になる理由は残念ながら資源不足と需給の面から説明できるため、今回の円安はなるべくしてなったと言えます。

今後も長期で見ると円高にはなりにくい

 今回は短期での円安の話となりましたが、長期的に見ても今後日本国の信用としての円は買われにくいと考えられます。理由として超高齢化の進行による労働人口の減少。海外の優秀な人材が日本企業を避ける状況からの世界で戦える日本企業の減少などがあげられます。経済の面から言えば日本国は斜陽と言えます。

日本円だけでなく海外資産にも目を向けるべき

 唯でさえ日本に住んでいる以上は日本国としてのリスクを多く背負ってしまっていますので、リスク分散のためにも海外資産に資金を振り分けていく必要があると私は考えます。日本円だけで持っているのは一点賭けをしてハイリスクハイリターンを求めているギャンブラーと何ら変わりありません。堅実な人ほど投資を行うべきです。

 投資は自由に国も資産の種類も選ぶ事が可能です。リスクを分散して日本国縛りから自由になりましょう。

最後に令和6年能登半島地震で被害に遭われた方々へ

 この度の地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆様にお悔やみを申し上げます。また、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

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