両親を看取って今、思うこと。クソみたいな人生を振り返る(熊本・負動産相続トラブル編)

雑談
火焔熊
火焔熊

父親の急逝に伴い、私が相続することになったのは、縁もゆかりもない熊本県阿蘇地方の「ど田舎の土地」でした。 正直、私はその土地をほとんど見たこともなければ、そこに住んでいる・貸しているという相手の顔も名前も知りません。本当に困り果てました。

こういう負の遺産は、親の世代でちゃんとケリをつけておくか、せめて全容がわかる資料を残しておいてほしいものです。死んでからも容赦なく苦労させてくれる親たちの、さらなる大仕事が幕を開けます。

登記だけで20万円。「負動産」フルセットの相続

 熊本阿蘇の土地について、生前の父からは何も知らされておらず、母に尋ねても「さぁなぁ……」とほとんど何も分かっていません。 仕方がないので、実家で見つけた固定資産税の納付書を頼りに司法書士へ依頼し、私名義への登記手続きを行いました。

その登記費用だけで、およそ20万円。 大した資産価値もないド田舎の土地なのに、手続きだけでやたらとお金を毟り取られ、猛烈にイラついたのを覚えています。そしてこの先、この相続した土地は我が家の家計を脅かす「負の資産」として大活躍することになります。

まず頭を悩ませたのが「農地」でした。 日本の農業の高齢化は凄まじく、うちの土地を借りていた小作人の方々も80歳近い年齢だったため、次々とバシバシ離農していきました。当然、入ってくる小作料(レンタル料)は激減します。

維持費がかからなければ放置でもいいのですが、現実は非情です。固定資産税だけでなく、なぜか「土地改良区」とかいう謎の組織から、年間10万円ほどの会費をバシバシ引き落とされるのです。 いらないので売却したいものの、法律上、農地は「現役の農家」にしか売れません。そう簡単に買い手が見つかるはずもなく、私はこの金食い虫の土地を前に、途方に暮れることになりました。

10年越しの生存確認。借地人Aの息子からの電撃電話

 さらに厄介だったのが、人に貸している「宅地」が2世帯分あったことです(それぞれ借地人A、借地人Bとします)。

そのうち「借地人A」に関しては、父が健在だった頃から10年以上も借地料の支払いが途絶えていました。そのため、私はてっきり「とっくの昔に夜逃げか引越しをして空き地になっている」と思い込んでいたのです。

ところが、どうやら普通に住んでいたようでした。ある日突然、私の元にその息子らしき人物から一本の電話が入ります。

借地人Aの息子
借地人Aの息子

借地していた本人が亡くなりまして。借地の返納手続きと、これまでの未払い分の借地料をお支払いしたいのですが、どうしたら良いでしょうか? 隣の借地人Bさんに連絡先を聞いてお電話しました

火焔熊
火焔熊

いや、突然借地料が途絶えてから10年以上経っていますので、こちらはもう誰も住んでいない認識だったのですが……

借地人Aの息子
借地人Aの息子

それでは困ります! 家から契約書が出てきたんです。とりあえず、半年分の借地料だけは口座に振り込んでおきました。私も定年退職の身でして、あまりまとまったお金は用意できませんし、このまま借り続けることもできないんです

10年以上の滞納額を今さら個人で回収するのも現実的ではなく、これ以上熊本の土地のことで揉めるのは御免でした。私は瞬時に損切りを決めました。

火焔熊
火焔熊

・・・わかりました。とりあえず、過去の未払い分の借地料についてはもう請求しません。その代わり、隣の借地人Bさんに事情を説明して、あなたの親御さんが借りていた土地を、そのまま引き取って(追加で借りて)もらえないか相談してもらえますか?

借地人Aの息子
借地人Aの息子

あ、相談したら借りてくれそうだったので、引き継ぎをお願いしておきました!

火焔熊
火焔熊

そうですか、ありがとうございました

火焔熊
火焔熊

借地人Bも適当すぎて不安だけどまぁ、いっか。

 案の定、この適当な判断が、次のさらなるトラブルを呼び込むことになります。

「追い出してください!」近隣住民からのクレームと無茶振り

 新しく土地を引き取った「借地人B」は、元々かなりルーズな人物でした。 地代の支払いも気が向いた時に突然、現金書留の封筒で送りつけてくるようなタイプで、お世辞にもまともな取引相手とは言えません。ちなみに、先ほど返却されたはずの借地人Aの家はいつの間にかぶち抜かれており、母屋の屋根を雨よけに転用した「借地人Bの私設車庫」へと勝手に改造されていました。

そんなある日、突然、熊本の現地住民から私の元へクレームの電話がかかってきます。

実家近所の住人
実家近所の住人

あんたの土地を貸している借地人Bの件だけどね! ルールは守らないし、好き放題やっていて近隣住民がみんな本当に困っているのよ! 今すぐあの男を追い出してください!

火焔熊
火焔熊

法律上、日本の『借地権』というのは非常に強い権利ですので、貸主である私の一存で立ち退きを要求することは不可能なシステムになっているんです

実家近所の住人
実家近所の住人

本当に迷惑してるの! 早く追い出して! そっちだって、あの借地人Bには困らされてる部分があるでしょ!?

火焔熊
火焔熊

確かに借地料の支払いが度々滞っているので困っているのは事実ですが、先ほども申し上げた通り、法律上、立ち退きを強制できません。そもそも、仮に無理やり追い出したとして、その後に入ってこなくなる年間の借地料は、誰が補填してくれるんですか?

実家近所の住人
実家近所の住人

悪いようにはしないから! こっちに任せて!

火焔熊
火焔熊

あぁ、一番任せちゃいけないタイプの人だこれ。そもそも『法律上追い出せない』って言っているのに、この人、全然こっちの話を聞いてないな……

 確かに、父親が生きていた頃から平気で地代を滞納するような男ですから、現地で近隣住民に多大な迷惑をかけているのは事実なのでしょう。
ただ、私に文句を言うのはお門違いです。本当に困っているなら、本人を相手取って裁判を起こすなりしてほしいものです。私は借地人Bの保護者でも、現地の自治会長でもないのですから。

20年越しのカミングアウト。「爺さんの遺骨、まだあるねん」

 東日本大震災から数年が経過した頃のことです。 実家でしばらく保管したままになっていた「父親の遺骨」について、「さすがにそろそろ、ちゃんとお墓に埋葬しようか」と家族で話し合っていた時のことです。

母親の口から、耳を疑うような衝撃のカミングアウトが飛び出しました。

「そういえば……おじいちゃん(私の祖父)の遺骨、まだ埋葬してないねん」

一瞬、母が何を言っているのか理解できませんでした。 祖父が亡くなったのは、私が4歳の時です。あれから優に20年近くが経過しています。

「え? じゃあ、じいさんの骨は一体どこにあるんだよ!?」と戦慄しながら問い詰めると、母は悪びれもせず「実家(熊本)の近くのお寺にずっと預けたままやわ」と言い放ちました。

なぜ20年間も放置していたのか。本当に、どこまでも人騒がせで計画性のない親たちです。勘弁してくれ……。

祖父と父親の遺骨を連れ、三方原での永代供養へ

 文句を言っていても骨は動かないので、私は再び熊本県阿蘇地方へと飛びました。 指定された『円通寺』というお寺へ出向き、20年間放置されていた祖父の遺骨をようやく受け取りました。帰りの飛行機では、事前に航空会社へ「遺骨を機内に持ち込む」旨を申請しておいたため、特にトラブルもなく運ぶことができました。(せっかくなので、道中は少しばかり熊本観光も楽しみました)

こうして遥ばる九州から連れ帰った祖父の遺骨と、これまで実家にあった父親の遺骨を合わせ、静岡県浜松市の三方原にある納骨堂へまとめて埋葬することにしました。

調べてみると、1人あたり約12万円で「永代供養」ができるとのことだったので、2人分で計24万円を支払い、無事に納骨を済ませました。 一応、手続き上の名義は母親に立ててやりましたが、言うまでもなく、母自身は手続きに関しても費用の面に関しても、ただの1ミリも動いていないのは言うまでもありません。

こうしてようやく、我が家の「過去の遺恨」がひとつ、形精算されたのでした。

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